翻刻
湯をつかひて行水といふ間違の教あり
しかれとも数ふ年湯をあひ暖熱の食をなす
事ならひとなれは今更急に水をあひ
冷物を食することも成かたしたゝ湯と
熱食は毒にして水と冷物は薬なりと
いふ事を会得なし其心得ありたき事也
腹中へ飲食治りて次なるものは直に腹中の
湯気にてこなすこと早く食気身中へ
めくるなり是を酒を造るにたとへてみれは先
米を能ふかし能さまして後麹と水をかへて
造込日を経て自然の湯気を生し能にへ和合
して酒に成也味噌醤油も同し事なり
いつれも暖熱を嫌也若しさまし方行届ず
して仕込時はかならす腐れて酒も味噌も醤油
も出来そこなふなり腹も其如く冷物はよく
こなれて食気めくりよし熱きものは腹中