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【右】
蔵(くら)の下積(したつみ)して居(い)たりけるを探(さがし)し出しはしかせめ来るよしを
咄(はなし)しけれは升麻葛根(しやうまかつこん)忽(たちまち)ち意追(いきほひ)【?】高(たかく)く声(こへ)張上(はりあけ)け時(とき)なる
かな〳〵我等(われ〳〵)両人芍薬甘草(しやくやくかんそう)と心を合せ采配取(さいはいとつ)て
先陣(せんちん)に向(むか)はゝ二三ヶ月か又半年の内に再度(ふたゝび)無病(むびやう)安(あん)
楽(らく)の世(よ)と成(なる)すべし【○成(なす)すべし】しかしなから参蘇飲入道(じんそいんにうとう)五苓散之助(これいさんのすけ)
桔梗湯五郎(ききやうとうごろう)などをも召(めし)つれ然(しかる)るべし涼膈剤介(りやうかくさいすけ)百虎(ひやくこ)
湯蔵(とうそう)は敵(てき)の様子(よふす)を見合(みあは)せ扣(ひかへ)【控】させんいつれ御医者(おいしや)のさしづに
依(よつて)て精力(せいりき)を尽(つくし)し責伏(せめふせ)んと威勢盛(いせいさかん)んに見へたりけるさて
麻疹勢(ましんせい)は先(まつ)子供大勢(こともたいせひ)の店(たな)を伺(うかゝ)ひ夜詰怠屈(よつめたいくつ)に
居眠(いねむり)りたる透(すき)を見すましぞつと一風吹かせて責入(せめいり)けれは
爰(こゝ)にも三人/彼所(かしこ)にも五人/頭痛発熱(つゝうほつねつ)終(つい)に騒動(そうどう)のもととは
【左】
なりにけり此よしはやく薬種方(やくしゆかた)に聞(きこへ)へけれは升麻葛根(しやうまかつっこん)
早速(さつそく)芍薬甘草(しやくやくかんそう)を引連(ひきつれ)れ身を火水に投(なけ)入れ徳利(とくり)の
内(うち)にかくれ毎朝(まいあさ)〳〵責(せめ)かけければ何(なに)かはもつてたまるへき手(て)
合(あい)の合戦(かつせん)は麻疹勢(はしかせい)まづかる〳〵と逃出(にけいて)たりかゝる様子(よふす)にては
格別(かくへつ)の案事(あんし)しもあるましと人々おもひける所に神田の八丁堀
に住(すまい)ける孫二郎が隣長屋(となりながや)に茶(ちや)九郎といふ若者(わかもの)あり
一旦(いつたん)麻疹勢(はしかせい)に脳(なやま)【悩】まされしが防禦(ふせき)の薬種勢(やくしゆせい)いろ〳〵
手(て)を尽(つくし)し早々(そう〳〵)に追退(おいしりそけ)け五六日にて平癒(へいゆ)しけるかげび
蔵(そう)なる生(うま)れつきにて一寸(ちよと)と向(むかふ)ふの屋台店(やたいみせ)葱真黒(ねぎまくろ)
なとをつまみ喰(くひ)貧乏徳利(ひんほうとくり)もなつかしくなり一盃(いつはい)き
げんに心うかれ何のまゝのかはよが破(やぶれ)れの小口(こくち)一と夜夫婦(よふうふ)