翻刻
【右】
夫(それ)麻疹(はしか)はその形(かたち)麻仁(あさのみ)の如(こと)く痘瘡(ほうそう)はその形(かたち)豆(まめ)の如(ことく)く形(かたち)に依(よつ)て名付(なつけ)
たるものなりその日本に流行(りうかう)せし事/栄花物語(ゑいくわものかたり)なとに見へ年限(ねんけん)ありて
必発(かならすはつす)すといへとも定(さたまり)たる数(かす)はなし中頃(なかころ)元禄(けんろく)三年庚午の秋(あき)より
同四年未の三月/下旬(すへ)にて世間(せけん)に流行(はやり)し大人小児(おとなことも)その害(がい)にあふもの
幾千万(いくせんまん)その後(のち)宝永(ほうゑい)五年戊子《割書:元禄三年ゟ|二十三年目》同六年己丑まて日本
国中(こくちう)一/統(とう)にはやり人民(じんみん)死亡(しほう)その数(かす)をしらす又/享保(きやうほ)十五庚
戌年《割書:宝永五年ゟ|二十一年目》はやり又/宝暦(ほうれき)三癸酉年《割書:享保十五年ゟ|二十四年目》はやり
又/安永(あんゑい)五丙申年/流行(はやり)《割書:宝暦三年ゟ|二十四年目》又/享和(きやうは)三癸亥年《割書:安|永》
《割書:五年ヨリ|三十二年目》流行(りうかう)して貴賤上下(きせんしやうけ)その害(がい)をかふむりしこと皆(みな)人の
知(し)る所(ところ)なりおもふにその流行するは疫気(やくき)の運行(うんこう)に随(したかつ)て腑(ふ)
中伏蔵(ちうふくぞう)の毒(どく)感発(かんはつ)する所(ところ)なり中古(ちうこ)よりこれを除(のそく)く方(ほう)も
【左】
又/治療(ぢりやう)の方(ほう)もありといへとも年数(ねんすう)定(さた)まらさるをもつて諸人(しよにん)油断(ゆたん)して
これを信(しん)せす時(とき)にのそんて刃手足掻(もみであがけ)とおよふことなしたとひ
その毒(とく)軽(かるう)ふして急(きう)に平愈(へいゆ)するとも一旦(いつたん)腹中(ふくちう)の腑臓諸経(ふそうしよけい)を
動擾(どうしやう)する事なれは食物禁忌(しよくものきんき)慎(つゝ)しまされはその害(がい)もつとも
はなはたし依(よつ)て今(いま)神聖(しんせい)の除呪法的験(まぢないほうてきけん)の二方を記(しる)して遍(あまねく)く
世(よ)にしらしむ此方(このほう)容易(ようゑき)にして奇々(きゝ)妙々(めう〳〵)となり明(みん)の殷方叔(いんほうしく)
が麻疹心法(ましんしんほう)に奥秘(おくひ)をきはめたる薬剤(やくさい)にもまさりその験(しるし)の
速(すみやか)なる事(こと)誠(まこと)に神(しん)のことし
麻疹除呪法(はしかをかるくするまじない)