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天人のあまくだりて爰(こゝ)に俳諧(はいかい)するかと思ひ。中々/医学(いがく)所
ても医者所(いしやところ)てもなく。青表紙(あをひやうし)を打捨(うちすて)赤裾(あかいもし)に眼(まなこ)をさらし
西石(さいせき)から内町(うちまち)へこそ〳〵と這入寄宿料(はいりきしゆくれう)に遣(つかひ)等まても此(この)
赤(あか)いもしの穴(あな)にのこらず押込度々(をしこみたび〲)入用(いりやう)金(きん)の頼状(たのみじやう)
遣(つかは)せども度重(たびかさな)れバ取敢(とりあへ)ず心(こゝろ)をいためる折柄(をりがら)右の次第(しだい)を
傍輩(かたはらばい)の医生(しよせい)に語(かた)りけれバ。初生(しよせい)のいはく。此頃去薬屋(このころさるくすりや)
の親仁(をやぢ)か物語(ものかたり)に今時(いまとき)見識はつたる医者(いしや)ハとんと流(は)
行(や)らす。孟子(もうし)の曰/智恵(ちゑ)あるといへども勢(いきほひ)に乗(のる)に如(しか)ずと
いへるがごとし。今京地(いまきやうち)の流行(はやり)医者(いしや)は皆々(みな〱)当世風(たうせいふう)の一(いち)
見識(けんしき)を立られし也。先気転(まつきてん)頓作(とんさく)先生(せんせい)を始(はじめ)として
権勢(ゆすり)弁口(へんこう)。高慢(たかいき)不斎(ふさい)。太皷(たいこ)弁慶(べんけひ)茶釜(ちやかま)順廻(じゆんくはい)
欲面一芳(よくつらいつはう)。茶羅月文盲(ちやらつきもんもう)。沼田蓴斎(ぬまたしゆんさい)今(いま)京地に
大家(たいか)の売家(うりいへ)は皆医者(みないしや)の居宅(きよたく)となりたしび
やう〳〵たる粧(よそほ)ひにぞ朝(あさ)から門前(もんぜん)に群集(くんじゆ)して市(いち)を
なす。昼(ひる)からハ三枚肩(さんまいかた)にて飛(とぶ)がたくかたいからかし誠(まこと)に
日本国(につほんごく)はおれしだいといふやうな顔付(かほつき)にて取(とり)わけ気(き)