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なんぼおふちやくもので手習(てなら)ひせいでもちつともしかること
ハなく若師匠(もししせう)がやかましうぬかすがさいご直(ぢき)に寺(てら)あがつて
たますと。寺子同士(てらこどうし)の咄(はな)してゐるを影(かけ)より聞及(きゝおよ)ひ師匠(しせう)
是(これ)をこわがつてびく〳〵してゐる也。親(おや)もまた子供(ことも)をよふ
たらす師匠(しせう)ハゑらひ上手(でうづ)ものじやなどゝ云(いひ)て誉(ほむ)る也
子供盛人(こともせいしん)して一生身(いつしやうみ)の徳(とく)に成(なる)手習(てなら)ひを教(をし)へて貰(もら)ひ
し恩(をん)ハとんと思(おも)ハす寺(てら)あかるがさいご五節句(ごせつく)二季(にき)の礼(れい)
に行(ゆく)のもとろくさいやうに思(おも)ひ師匠(しせう)の方(かた)へ再(ふたゝ)び見(み)むき
もせぬやうなるは薄情(はくじやう)なること是(これ)むかしと今ハ大ひなる違(ちが)
ひなり
○むかしハ金(かね)の貸借(かしかり)の証文(しやうもん)の留(とめ)には。若返済(もしへんさい)いたさねバ。
我等(我ら)人にてハ無御座候為後日仍て如件などゝ書(かき)し也。又/私(わたくし)に物(もの)
不被仰(をゝせられず)候とも一言(いちごん)の申分無御座候後日仍て如件とも書(かき)し
もの也むかしの人気是(しんきこれ)にて押量(をしはか)り知るべし。今の証文(しやうもん)にハ
誠(まこと)に芝居(しはゐ)の番附(ばんづけ)見るやうなる無流様々(むりうさま〲)の文句(もんく)を書(かき)な
らべても返(かへ)しかぬる也。かねをかへさねバ。人間の交(ましは)りもならず大(おほひ)なる