← 前のページ
ページ 14 / 100
次のページ →
翻刻
感(かん)じ医者(いしや)の奥義(おうぎ)を伝授(でんじゆ)すべし。しかしながらむかしの療治(りやうぢ)
ハ今の病人(びやうにん)にハとんと間(ま)にあわず。されバとてむかしの火(ひ)が
今はつめたし。昔(むかし)の水(みづ)か今(いま)ハあついといふこともなけれども
その風義(ふうぎ)の替(かわ)ることハ雲泥(うんでい)の違(ちが)ひなり爰(こゝ)に譬(たと)へ
をもつて云(いひ)聞(きか)すべし
○抑(そも〱)昔(むかし)の小児(せうに)をおどすにハ元興寺(がごぜ)などいひ或ハうそつけ
ハ地獄(ぢごく)の釜(かま)へはまるなどゝいひてしかつたにこわかつたもの
なれとも。今ハそんなこといひて子供(ことも)をしかれバ。些(ちと)はまつて
行水(ぎやうずい)かしてみたいなどゝ云(いひ)て嘲哢(てうろう)をする又/地獄(じごく)の絵(ゑ)
などを見せて威(おど)したものなれとも。今時(いまとき)ハそんなとろひ
ことでこわかるやうな子供(ことも)ハ壱人(ひとり)もなし。又/昔(むかし)ハ寺子屋(てらこや)へ
手習(てなら)ひにやらんと思(おも)へハ先師匠(まつしせう)の筆法手跡(ひつはふしゆせき)を撰(ゑらみ)て
弟子(てし)入さしたもの也。師匠(しせう)も手習(てなら)ひ子(こ)がおうちやくなれバ
他家竹(たけ)の根むちを以て打擲(ちやうちやく)し。或ハ机文庫(つくへぶんこ)を背(せな)に負(おわ)せ
追(おひ)出せしものなれど。今(いま)ハ師匠(しせう)の方(かた)から機嫌(きげん)とつて折々(をり〱)ハ
まんぢうでも又/銭安(ぜにやす)て数(かず)の有菓子(あるくはし)でもやつてたらし込(こみ)