← 前のページ
ページ 53 / 100
次のページ →
翻刻
なれバ治(なをつ)て時分(じぶん)にハ。あの医者(いしや)はぐつ〳〵と関狭(せきせまふ)
いはず大場(おほば)な療治(りやうぢ)の仕様(しやう)じや流石(さすが)大医(たいい)の学者(がくしや)
じやのとひとり治(なを)つても上手のやうに云(いふ)もの也
○/療治中(りやうぢちう)薬はとんときかず其上/俄(にわか)にわるふ
なること有(あつ)て病家(びやうか)より此頃(このころ)は病人(びやうにん)心持(こゝろもち)すぐれ
ませず何(なに)となふわるふござり舛といふ時(とき)即座(そくざ)に
空(そら)をながめ。何分(なにぶん)此頃(このころ)不順(ふじゆん)でハ。何方(いつかた)でも兎角(とか)
御病人にハやう当(あた)るものでござり舛イヤハヤ此頃(このころ)の時(じ)
候(こう)でハあんばいのよい人てさへ心持(こゝろもち)がわるふござり舛ゆへ。
御/病人(びやうにん)にハ些(ちつと)ヅゝの御/故事(こごと)ハありうちのことでござり
ますと云(いひ)抜(ぬけ)をすべし惣(そうじ)てわるふなる時は時候(じこう)にわ
かすが多(おほ)く入用(いりよう)なり又/熱病(ねつびやう)なれバ熱(ねつ)のさし引と
云抜(いひぬけ)すべし又は痰(たん)のさし引(ひき)其外/積気(しやくき)を呼出(よひだ)し
ましたなとし云もよし。或ハ急(きふ)に悪(わる)ふなる時は急変(きふへん)の
発(おこ)りしと云是(いふこれ)ハ別(べつ)ことなどゝいふて得心(とくしん)さすべし
附り 病ハとつくりと治(なを)すれとも命の程ハ知らぬと