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こちらへぬらりとした前置(まへをき)をいふてもとんと気(き)のつ
かぬもの也。扨(さて)一両日二三日も見舞(みまひ)ても。御/影(かげ)てと云声(いふこゑ)
がかゝらねハ。やがて病家(びやうか)より断(ことはり)を云(いふ)へし。其断(そのことはり)をいはぬ
先(さき)に。此方(このはう)から。又/余人(よじん)にても見(み)せて御らふじませといへバ。
却(かへつ)て信仰(しんかう)もましてやはりあなた様(さま)の御/苦労様(くろうさま)に預(あづか)り
たふござりますれども。余人(よじん)にてもと仰(おほせ)られますからハ
とふもいけんとの思召(おぼしめし)で御さりますかなイヤ〳〵さやうでハなけ
れどもホンニそこが用心と申もので。かやうに申もものを
大事(だいじ)に存(そんし)ますからのことで御さり舛といふもとかく引導(いんたう)
を次(つぎ)の医者(いしや)に譲(ゆづ)る工面(くめん)にて。そろ〳〵と逃尻(にけじり)をいふハ。
病家(びやうか)もせんど評義(へうぎ)の上替(うへかへ)たる医者(いしや)のことなれバ。せん
かたなく。さやうなれバ。あなた様(さま)の思召(おほしめし)の御/医者様(いしやさま)でも
御/差図(さしづ)下せれませといふ。其時兼(そのときかね)て大医(たいい)の組下(くみした)と
なり置(をき)。フウ差図(さしづ)と申せバ先当寺(まづたうじ)流行(りうこう)の大医(たいい)。
勇摺(ゆすり)弁口(べんこう)へ見せて御らふじませ。拙者(せつしや)が申たといふて。
使(つかひ)をやられませねバ。此節(このせつ)病家(びやうか)数(かず)おほくゆへ参(まい)ら