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おはんハ大きに驚(おどろ)きヲヽイヤといひけれバ敷安(しきあん)心(こゝろ)どき
〳〵いかゞハせんと思ひしが心をふたゝび取直(とりなを)しホンニそれ〳〵
誠(まこと)哉(や)加賀(かゞ)の千代(ちよ)女か句(く)に。思ふ人にいやと女(をんな)のつみ
ふかくとよみしこともありされバ。女のいやハやはり得心(とくしん)
したる枕(まくら)ことば也と思ひ又々/再(ふたゝ)び思ひ切(きつ)たる其振(そのふる)
舞(まひ)今度(こんど)ハおはんも大きにびつくり仰天(ぎやうてん)し大声(おゝごへ)
あげてヲヽいや〳〵〳〵とむつくと起(おき)てあきれ果(はて)て
逃(にげ)て入足音(いるあしおと)敷安(しきあん)が耳(みゝ)にハ雷(かみなり)の落(をち)たるごとく
面目(めんぼく)を灰(はい)にまぶし。きせる田葉(たば)こ入も打忘(うちわす)れ、ろく〳〵
に暇乞(いとまこひ)をもせずして足(あし)を宙(ちう)にして己(をの)が家(いへ)にで
逃帰(にげかへ)り倩(つら〱)思ひけるハ。古人(こじん)の金言(きんけん)をも忘(わす)れ加賀(かゞ)
の千代(ちよ)女のいひしこともとんとあてにならずと。偏(ひとへ)に
千代を恨(うら)みけるが発句(ほつく)を実(まこと)とし外聞(ぐはいぶん)を灰(はい)に
まふせしことも。これみな千代がうそのかわより出(いで)たり
と己(をの)が臭(くさ)みを棚(たな)にをきひとへに千代(ちよ)女を恨み(うらみ)ける
○