翻刻
喜三二は目をひらきて
みればたちまちはれ〴〵
とあかるくなりけり今
まではめをふさぎてゐ
たるゆへまつくらになり
たるとおぼへしなり
さればばかすもばかさ
れるもみな人の心にあり
ばかにするもばかにされるも
おなし道理なりと
さとりてそれより化物
ざうしをつゞりてはつ春
のわらひにそなふ
【右ページ下、喜三二の台詞】
まづ
上の
まきは
まぎら
かして
しまつた
うれしや
〳〵
【右ページ枠の中】
といふことを演(のべ)てこれより化物ざうしの初り
さやうにとしかいふ
時に丙午の年九月尽 喜三二
【左ページ、ここから二巻目】
こゝに手柄
の岡もちと
いふものあり
おなし狂歌
のれん中に
しぶぞめの
びくあみ【渋染のびくあみ】と
まくりのさほ
ふと【まくりの竿太】とろ
川のつれんど【泥川のつれんど】
なとあつまり
人のゆかぬ
所に手から
はあること
なればおい
てけぼり
つりに行て
見んと云
ける
【右端の小さな文字】
おいてけほりをこはがるはきついたわけ【馬鹿な】なことさ
【左端の人物の頭の上】
ばけが出たら
いけとる
なとも
よか
ろう
【左端】
ハテ
もし
おいてけと
いふならおいてくる
ふんのことだ たかの
つんだものだ【「高の知れたものだ」の意】