翻刻
【右丁】
やくら下ばんづけのこへは
きけどもしんしや【神社】とつし【辻】が
おもかげはとし玉てみるぐらひ
のことおふみはふつとしあん
しけるはなんともせけんの
むすめをみるにとかくしんしやう【「身上」=身分、地位、暮らし向き】
のよきものはこゝろのまゝに
ならずしんみち【新道…町家の間にある狭い道。またそれに面した家。多く借家などのあるところ】におやこ
三人ねて
くらすと
いふところ
でなけれ
ばいかん
とにわか
にかるいくらしに
なりたくおもふ
〽ふし
きやく
ろはぶたへ【黒羽二重】
のくれすぎ【意味不明。多分ヨレヨレにくたびれた物という意】
なるをちやくし【「着し」=まとう、着る】
たるおとここつ
せんとあらわれふる
いがぜんざい【善哉=よきかな】〳〵われは
なんじがいのるところの
【左丁 上部】
すかんひん【素寒貧=貧しくて身に何も無いこと。】なりそれくさぞうしの
こんたんにかみ〴〵さまをいのること
まゝあれどもいまだこのすかんびんをいのる
もの一にんもなしあんまりてめへの
こゝろいきがうれしいからこれこ
のまくらをさつく【授く】なりかた
じけなくもこのまくらは
せつくまへのかき
だし【書出し=請求書】あるひは
もん日もの日【「紋日物日」もんびものび…江戸時代、主として官許の遊里で五節句やその他特別の日と定められた日。この日遊女は必客をとらねばならず、揚代もこの日は特に高く、その他、祝儀などで客も特別の出費を要した。】に
つまり【いっぱいになる】たるかん
なん【患難=身に降りかかってくる災難。ここでは遊女からの誘いの手紙】のふみ
がら【文殻=読み終わって不要となった手紙】にて
しあげ
たるまくら
なり
これ
にてぐ
いね【すぐに寝込むこと】をするならば
なんじかこゝろのまゝなるべし
【左丁 中央】
あなたは
きのいゝ
さだくろう【定九郎…歌舞伎「仮名手本忠臣蔵五段目の登場する人物で。人を殺して金を奪うところから無頼の武士、泥棒,追はぎのことをいう】と
いふふうだ