Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

BnF. Département des manuscrits. Japonais 190-191 - 翻刻

BnF. Département des manuscrits. Japonais 190-191 - ページ 137

ページ: 137

翻刻

世間(せけん)のありさまを熟(つく〴〵)と案(あん)ずるに。幼年(ようねん)は泉中(せんちう)の夢(ゆめ)暁(あかつき)知(し)らぬ別(わか)れとなり。余(よ) 筭(さん)は風前(ふうぜん)の燈(ともしび)暮(くれ)をも頼(たの)まぬ憂(うれひ)に沈(しづ)んで。既(すで)に此生(このしよう)を蹙(しゞめ)んとす大丈夫(だいぢやうぶ)豈(あに) 鬱々(うつ〳〵)として歎(なげ)きに死(し)することあらんや。秀次(ひでつく)を以(もつ)て帝都(ていと)の守護(しゆご)となし。日(につ) 本国中(ほんこくちう)の事(こと)を掌(つかさどら)しめ。我(われ)は将(まさ)に大明国(たいみんこく)に入(いつ)て皇帝(くわうてい)とうちなつて。老(おひ)の鬱(うつ) 情(じやう)を晴(はら)さんに何(なん)の子細(しさい)かあるべき。其上(そのうへ)去年(きよねん)書翰(しよかん)を朝鮮(てうせん)に馳(は)せて略(ほゞ)此事(このこと)を 通(つう)ずと雖(いへ)ども。彼国(かのくに)未(いま)だ有無(うむ)の沙汰(さた)なし。是(これ)又(また)罪(つみ)せずんば有(あ)るべからず。我(わ)れ 思(おも)ふに先(まづ)大明(たいみん)をば打(うち)すて置(おき)。朝鮮(てうせん)を征伐(せいばつ)して朝鮮(てうせん)我(わ)が意(こゝろ)にしたがはゞ。彼(かれ)が兵(へい)を 先手(さきて)として軍(いくさ)を進(すゝ)めんに従(したがは)すんば。こと〳〵攻夷(せめたいら)ぐべし直(すぐ)に我(わ)が鉾先(ほこさき)を以(もつ)て。 大明(たいみん)に入(い)らんには手間(てま)どる事(こと)あるべからずと。思案(しあん)し給へ早々(そう〳〵)聚楽城(じゆらくじやう)に還(かへ) らせ給ふは。ひとへに邪慢(じやまん)の天狗(てんく)どもよき折(をり)を窺(うかゞ)ひ。秀吉公(ひでよしこう)の心中(しんちう)に入(いり)かはりて障(しやう)