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対馬国(つしまのくに)へ漕渡(こぎわた)らんとするほどに風(かぜ)かはり。船(ふね)を出(いで)すべきやうなく十日 余(あま)りはいか
りをも起(おこ)さず。此時(このとき)に海路(かいろ)の諸将(しよしやう)九鬼大隅守嘉隆(くきおほすみのかみよしたか)が方(かた)に集(あつま)りて。軍中(くんちう)
の約速(やくそく)をなす。時(とき)に大田小源吾(おほたこげんご)。毛利兵橘(もうりへいきつ)。竹中源助(たけなかけんすけ)。懸樋弥五郎(かけひやごろう)。毛利(もうり)
民部大夫(みんぶたいふ)。は秀吉公(ひでよしこう)より軍中(ぐんちう)の目付(めつけ)として付(つけ)られし人々(ひと〳〵)なり。諸将(しよしやう)各々(おの〳〵)誓(せい)
詞(し)を以(もつ)て。其約速(そのやくそく)を衆士(しゆうし)に示(しめ)すべしと衆議一決(しゆうぎいつけつ)しければやがて誓詞(せいし)の前(まへ)
書(がき)を定(さた)む其(その)ケ(か)条(てう)には。
一 船中(せんちう)の軍評定(いくさひやうぢやう)の儀(ぎ)最(もつと)も其中(そのなか)のよろしきところ有(あ)るを択(えら)んで
用(もち)ゆべき事
二《割書:ニハ》諸船(しよせん)何(いづ)れに依(よ)らず危難(きなん)にのぞむ事(こと)あらば急(きふに)可相救(すくふべき)の事(こと)
三《割書:ニ》 歒謀(てきばう)珍布(めつらしき)手立(てだて)あらば互(たがひ)にこれを申談(まうしだん)すべき事(こと)