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八日の初昏(しよこん)にあたつて。諸(もろ〳〵)の宰官大臣(さいくわんたいじん)を招集(めしあつ)め倭賊(わぞく)の寄来(よせきた)ること急(きふ)な
れば。一先(ひとまづ)京都(きやうと)を出(い)てひらいて重(かさ)ねて冠(あだ)を退(しりぞ)けんと。朝鮮王(てうせんわう)李㫟(りえん)は宮(きう)の東廂(とうしやう)
に出(いで)給へて地(ち)に座(ざ)せられ。灯燭(とうしよく)を張(は)りて詮議(せんぎ)ある一 族(そく)の人々(ひと〳〵)には。河源君(かけんくん)
河陵君(かりやうくん)。待座(じざ)したり時(とき)に大臣(だいじん)某(それがし)申すやう。事勢(じせい)すでにこゝに至(いた)れり恐(おそ)れ
ながら車馬(しやが)【駕の誤ヵ】。暫(しばら)く平譲(へくしやく)に出(いで)て幸(みゆき)まし〳〵。其後(そのゝち)大明(たいみん)の天朝(てんてう)へ兵軍(へいぐん)を請(こ)ひ
給へしかして国郡(こくぐん)を収(おさ)め給はんに何(なん)の子細(しさい)か候はんといふ。掌令(しやうれい)権悏(けんけふ)は進(すゝ)み出(いで)
大音聲(たいおんじやう)に呼(よば)はるやう。京城(けいじやう)を固(かた)く守(まも)るの外(ほか)量見(りやうけん)なかるべし。若(もし)京城(けやうじやう)を御《割書:ン》
ひらきあらんことは失策(しつさく)〳〵。と其詞(そのことば)はなはだかまびすし。其時(そのとき)柳成龍(りうせいりやう)これ
を静(しづ)めて危乱(きらん)の間(あいだ)と云(いへ)ども君臣(くんしん)の礼(れい)なんぞ乱(みだ)らん汝(なんぢ)が体(てい)しかるべかるず暫(しばらく)
退(しりぞい)て啓(けい)すべし。悏(けふ)呼(よば)はつて重(かさ)ねてのゝしり。左相(さしやう)もまた此言(このことば)を出(いだ)すやしからば