← 前のページ
ページ 290 / 451
次のページ →
翻刻
て更(さら)に軍平(ぐんひやう)を調(とゝの)へて。忠清道(ちくしやくたい)の巡察使(しゆんさつし)尹国馨(いんこくけい)と諸(もろ)ともに。軍平(くんひやう)を一ツに合(がつ)し
て進(すゝ)まんとす。慶尚道(けくしやくたい)の巡察使(しゆんさつし)金晬(きんすゐ)もまた其(その)本道(ほんだう)より。官軍(くわんぐん)数(す)十人を
率(ひ)ひて来(きた)り会(くわい)し。総軍(そうぐん)五万人の兵士(へいし)となりぬ此兵(このへい)を卒(そつ)し。北斗門(ほくともん)の山上(さんじやう)
に登(のほ)りて見(み)れば。倭(わ)の軍平(ぐんひやう)を籠置(こめおき)たる小城(こしろ)のあるを見(み)すまし。勇士(ゆうし)白(はく)
光彦(くわうげん)李時禮(りじれい)といへる二人の者(もの)をつかはし。敵兵(てきへい)を甞(こゝろ)みせしむ此城(このしろ)は浮田(うきた)
秀家(ひていへ)が家臣(かしん)。戸川肥後守(とかはひごのかみ)。花房助十郎(はなぶさすけじふらう)と云者(いふもの)五六百人にて籠(こも)り居(ゐ)ける
が。光彦(くわうげん)等(ら)すでに。先鋒(せんばう)を率(ひい)て山上(さんじやう)に登(のほ)つて。城壘(じやうるい)に拒(いた)り近(ちか)づくこと十余町(じふよちやう)
ばかりにして。馬(うま)を乘(のり)はなち歩行立(かちだち)なつて矢(や)を発(はつ)すされども。戸川(とかは)花房(はなぶさ)与(よ)
力(りき)の者(もの)に下知(げぢ)をなし。堅(かた)く守(まも)りて音(おと)もせず静(しづ)まりかへつて出(いで)ざりけり。光(くわう)
彦(げん)等(ら)おもふやう。此城(このしろ)番手(ばんて)の小城(ごじろ)ゆゑ。城兵(じやうへい)最(もつと)も少(すく)なければおそれて出(いで)ぬ