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たれ給へけん大(おほい)に暴雨(ばうう)降來(ふりきた)り。南(みなみ)より吹(ふき)かくる風(かぜ)つよく狄兵(てきへい)ども。眼(まなこ)を開(ひら)かんやう
なきゆゑ少(すこ)し足立(あしだち)まばらになるを。清正(きよまさ)の兵士(へいし)得(え)たりや応(おう)と捲立(まくりたつ)て戦(たゝか)ふ程(ほと)
に。狄兵(てきへい)大(おほい)に乱(みだ)れて引退(ひきしりぞ)けば清正(きよまさ)はおもふやう。此(この)敵兵(てきへい)もとよりも撃(うち)たやすべき
敵(てき)にあらずとおもひて。相引(あひびき)にこそ引(ひき)たりけるが。尚(なを)したひ来(きた)る事(こと)もやとおもひけれ
ば。齋藤伊豆入道立本(さいとういづにうだうりうほん)。井上大九郎(いのうへたいくらう)の両人(りやうにん)に命(めい)じ後殿(しんがり)をなさせ総軍(そうぐん)をまとめ
安辺(あんへん)さして押行(おしゆき)けるところに。また〳〵女真国(おらんかい)の兵(へい)五千三千つゝ。所々(ところ〳〵)より打(うつ)て出(い)て
道(みち)の妨(さまた)げをなしけるを大九郎(だいくろふ)立本(りうほん)の両人(りやうにん)打散(うちちら)し〳〵通(とほ)りけるが。こゝに女真国人(おらんかいしん)
の中(なか)より。七 尺余(しやくよ)の大 男(おとこ)二三 千計(ばかり)の兵(へい)を引(ひい)てしたひ來(きた)りて戦(たゝか)ひをいどみければ。井上(いのうへ)齋(さい)
藤(とう)も引(ひつ)かへし戦(たゝか)ひけるに此兵(このへい)すこぶる強勇(がうゆう)にしてなか〳〵切崩(きりくづ)しがたく見(み)えけれ
ば。両人(りやうにん)轡(くつはみ)を双(なら)べ敵中(てきちう)へ切(きつ)て入(いり)。四方(しはう)八面(はちめん)に当(あた)りて血戦(けつせん)す。敵兵(てきへい)の中(なか)より真黒(まつくろ)に鎧(よろ)ふたる