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兀良哈人(おらんかいじん)身(み)の丈(たけ)七 尺余(しやくあま)りなるが。剣(けん)【釼は俗字】を廻(まわ)して打(うつ)てかゝるを。立本(りうほん)蒐合(かけあはせ)て一上(いちじやう)
一下(いちげ)落花未塵(らくくわみぢん)【未は微とあるところ】と戦(たゝか)ひけるが。立本(りうほん)面倒(めんだふ)なりと太刀(たち)投捨(なげすて)むづと組付(くみつけ)ば。敵(てき)も心(こゝろ)
得(え)たりと互(たがひ)に捻合(ねぢあひ)。両馬(りやうば)が合(あひ)に摚(どう)と落(おち)上(うへ)を下(した)へと組合(くみあひ)けるが。両人(りやうにん)ともに雨降(あめふり)
に組合(くみあひ)けるゆゑに。傍(かたはら)の深田(ふかだ)の中(なか)へすべり落(おち)たりしが。立本(りうほん)やがて上(うへ)になり力(ちから)をきは
めて取(とつ)て押(おさ)へ。首(くひ)をかゝんとさし添(ぞへ)を探(さぐ)りけるに。組合(くみあひ)し折(をり)落(おと)しけるにやあらざれ
ば。いかゞはせんとしばし躊躇(ためろふ)とき敵(てき)は刎(はね)かへさんと掙扎(もかく)ゆゑ必死(ひつし)をきはめて咽吭(のとふへ)
へ喰付(くひつき)しかば何(なに)かはもつてたまるべき七転(しちてん)八 倒(たふ)して死(しゝ)たりける立本(りうほん)はなんなく敵(てき)を
喰殺(くひころ)し深田(ふかだ)の中(なか)より這上(はひあが)り大手(おほで)をひろげて敵中(てきちう)に駈入(かけいれ)ば此(この)有(あり)さまに恐(おそれ)をなし兀良(おらん)
哈人(かいじん)右往左往(うわうさわう)に散乱(さんらん)し四方(しはう)へさつと退(のひ)たりける扨(さて)又(また)井上大九郎(ゐのうへたいくらう)は立本(りうほん)の勝負(しやうぶ)い
かゞとあんじ敵(てき)を八方(はつはう)へ切散(きりちら)し人(ひと)なき所(ところ)を行如(ゆくごと)く働(はたら)きけるところに身(み)の丈(たけ)七 尺(しやく)