← 前のページ
ページ 386 / 451
次のページ →
翻刻
爾(じ)の合戦(かつせん)なして。万一(まんいち)其方(そのほう)ども討死(うちじに)などなすならば此(この)長政(ながまさ)を誰(たれ)か補佐(ほさ)すべき夫(それ)
ゆゑに申せしなり。四 万(まん)に余(あま)る大敵(たいてき)を纔(わづか)に二千 余(よ)の小勢(こぜい)にて打破(うちやぶ)りたる働(はたら)き。今(いま)
にはじめぬ事(こと)ながら比類(ひるひ)なき手柄(てがら)なり。必(かなら)ず長政(ながまさ)か言葉(ことば)を心(こゝろ)にかくることなかれ
とて。それより手負(ておひ)の小屋(こや)〳〵を見廻(みまは)りて。また栗山(くりやま)が小屋(こや)へかへられける時(とき)。先手(さきて)
の将(しやう)みな〳〵来(きた)りて合戦(かつせん)の物語(ものがた)りなどしけるに。黒田惣右衛門(くろだそうゑもん)注進状(ちうしんじやう)書(かき)なをしの
ことを申 出(いだ)しければ。長政(なかまさ)何故(なにゆゑ)書(かき)なをし候やと尋(たつね)られけるに。栗山(くりやま)さん候 敵(てき)は四 万(まん)に
余(あま)る大軍(たいぐん)。味方(みかた)は二千 計(ばかり)の小勢(こぜい)ゆゑなか〳〵勝(かつ)べき戦(たゝか)ひならねば。只(たゞ)討死(うちじに)と覚悟(かくご)
をなし候へば。あと〳〵にて黒田(くろだ)の者(もの)ども死(し)すべき軍(いくさ)に。加勢(かせい)をたのみしなどゝ云(いは)れ
んことの口(くち)おしさに。したゝめなをし此地(このち)の事(こと)は御《割書:ン》心(こゝろ)やすかるべしと申上候。また仮令(たとへ)君(きみ)
加勢(かせい)をなし給はんにも。此所(このところ)より葛原(かつげん)まて九 里(り)の行程(ぎやうてい)を注進(ちゆうしん)なし。夫(それ)より御人(こにん)