← 前のページ
ページ 410 / 451
次のページ →
翻刻
打乗(うちの)せ江(え)の中流(ちうりう)まで漕出(こぎいだ)し。倭軍(わぐん)の兵船(へいせん)を射立(ゐたて)つゝ稍(やうや)く東岸(とうがん)に近(ちか)づけ
ば。倭軍(わぐん)はすでに射(ゐ)しらまされて引退(ひきしりぞ)く。朝鮮(てうせん)の船中(せんちう)より玄字鋭(げんじえい)と名付(なつけ)
たる。大箭(おほや)の椽(たるき)の如(ごと)くなるを発(はつ)すを見(み)て。日本(につほん)の兵士共(へいしども)此(この)大箭(おほや)を取上(とりあげ)大(おほい)に
肝(きも)をつぶさずといふ者(もの)なし。依茲(こゝにより)倭(わ)の軍兵(ぐんひやう)ども此所(このところ)は安(やす)く攻破(せめやぶ)りかたし
とて。暫(しばら)くこゝを引退(ひきしりぞひ)てぞひかへたり。
朝鮮(てうせん)の軍兵(ぐんひやう)浅灘(あさせ)に備(そな)ふ事(こと)
其頃(そのころ)日(ひ)を経(へ)て雨(あめ)降(ふ)らざりし故(ゆゑ)によつて。江水(こうすゐ)日々(ひゞ)に縮(ちゞま)りければ城中(じやうちう)是(これ)を
憂(うれ)ひ苦(くるし)み。一人の大臣(だいじん)を差遣(さしつかは)し雨(あめ)を求(もと)めて檀君(だんくん)箕子(きし)東明王(とうめいわう)の廟(びやう)に祷(いの)ら
せけれども。雨(あめ)は猶(なほ)少(すこ)しも降(ふ)らず柳成龍(りうせいりやう)は尹斗壽(いんとじゆ)に向(むか)つて云(いふ)。此所(このところ)水(みず)深(ふか)ければ
歩渡(かちわた)りせんこと最(もつと)もかなふべき所(ところ)にあらず。其上(そのうへ)漕(こぐ)べき船(ふね)一 艘(さう)もなければ倭(わ)