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まねきしも此時(このとき)の事(こと)と聞(きこ)えける。同(おなじく)欽明天皇(きんめいてんわう)の在位(さいゐ)の時(とき)新羅(しんら)より任(あま)
那(な)百済(ひやくさい)を攻(せむ)るにより。日本(につほん)より是(これ)を救(すく)はしむ其使者(そのししや)の一人。膳(かしはで)の臣(しん)巴提使(はでし)と
云者(いふもの)あり。百済(ひやくさい)へ趣(おもむ)ける路(みち)にして深雪(ふかゆき)に遇(あひ)ぬるが故(ゆゑ)に。海辺(かいへん)に一宿(いつしゆく)したるに召具(めしぐ)
したる童子(どうじ)を虎(とら)のために喰殺(くひころ)さる。巴提使(はでし)これを大(おほい)に怒(いか)り虎(とら)のすでに行(ゆき)さり
し足(あし)のあとを追(おひ)たづね。山中(さんちう)に入(い)りたりしに遂(つひ)にかの兒(ちご)を喰(くろ)ふ虎(とら)を見出(みいだ)し。かゝ
つて是(これ)を搏(うた)んとす。虎(とら)は怒(いか)りの相(そう)をなし口(くち)をひらいて進(すゝ)み來(きた)るを。巴提使(はでし)左(ひだり)の手(て)
にてやがて虎(とら)の舌(した)をとり。右(みぎ)の手(て)にて刀(かたな)をとりそのまゝ虎(とら)を引(ひき)とらへ刺殺(さしころ)し。其皮(そのかは)を
剥(はい)たくりて日本国(につほんこく)に帰朝(きてう)せり。かくて百済王(ひやくさいわう)使者(ししや)を献(けん)じて仏経(ぶつきやう)佛具(ぶつぐ)諸道(しよたう)の博(はか)
士(せ)を奉(たてまつ)る。同(おなじく)御宇(ぎよう)二十三年 高麗(かうらい)新羅(しんら)はやゝもすれば日本(につほん)の下知(げぢ)に背(そむい)て。貢献(こうけん)
の備(そなひ)ざる故(ゆゑ)。紀男麻呂(きのをまろ)河辺(かはべ)の臣(しん)等(ら)をつかはして討伐(とうばつ)せらる。その軍(ぐん)の大将(たいしやう)擒(とりこ)とな