翻刻
供せられつつあるは教育界一般の傾向なるに拘らず其郷土の誌料に乏しきは
実に遺憾とする所である夫れ鳥島の住民は自助の精神を奮起し新に自己の運
命を開拓せざる可ざる住民である移住の主旨精神を貫徹せざれば止まざる責
任ある住民である鳥島の向上発展と産業の振興を謀り国家に貢献せんとする
住民である要は努力奮励を以て大に
聖恩に報ひ奉らんとする住民でなくてはならぬ斯の如く進取敢為の気象に富
む字鳥島の移住歴史を明にし之を子弟に教へ先づ子弟をして愛郷の念を湧起
せしめんとするのである由来愛郷心の養成は国土愛護の精神を涵養する所以
たるを思惟し茲に此の「鳥島移住始末」てふ小冊子を記し一は以て鳥島の移住
顛末と主旨精神を年少子弟に教へ第一に移住に就きて
皇恩の難有きを体得感謝し奉らしめ一は以て郷国愛護の精神を涵養すると
倶に忠国愛国の念を盛ならしめんとの微意に外ならぬ辛に鳥島先輩及子弟諸
子の諒察を得ば余の満足何方のか之に過る者あらむ矣
大正九年三月 斎藤用之助識
鳥島移住始末
解 説
一.此の書は鳥島人民は始めどんな生活をして居たか亦移住の動機はどんな工
合に起因しどんな沿革を経てどんなにお上の保護を受けどんな人々の尽力
で移住する事が出来たか今は父母兄弟姉妹と共に一家団欒の楽を倶にして
此の難有き 聖代の臣民たる事が出来きたと云ふ事を鳥島の年少子弟に
覚らしめたいと云ふ目的で此書を著はすことにした
一.本書の第一に於て藩政時代の鳥島を第二に於て廃藩置県後の鳥島を第三に
於て移住間際の鳥島を述べ移住前の状態を明にし即生活其他の有様を知ら
しむる事にした
一.本書の第四に於ては移住後の鳥島の事で即移住の起因より移住の終りまで
に湧き出たる事項を網羅し移住の状況を知らしむる事を骨子として書た此
第四に在ては「習ふもの」「教ゆるもの」倶に最も注意して移住事件の真相を了解