翻刻
さる釈迦如来開帳にていよ〳〵尊し
阿弥陀堂にて大念仏の音にとり交
放下師の寄太皷たゝ鄙人の耳目を
おとろかすはかり也
嵐山にて
山の名のあらしもよきてはるの日の
ひかりのとけき花の夕はえ
雪はらふ筏や華のあらし山
此川に九条殿の公達船をうかへて
管弦し給ふを拜て
糸竹の波にひゝきてゆくふねの
あそひも高き雲の上人
同処の床几にて昼餉小筒の数〳〵
興さらに尽る期なし名産とて
いとあさらけき鉢さかなに
汲あゆに独活【うど】の香もありさき膾【注】
大井川
【注 さき(裂)膾=鰯を、刃物を用いないで指で裂いて調理したなます。】