翻刻
きのふまて見し花鳥は現にて
夢とわかるゝ春そつれなき
山彦にも残らぬ春や木々の奥
更衣都よりかへりて
馴きぬるみやこの花のうつり香を
なをおしまるゝけさの衣手
九重のころもかへして夏ころも
道の友たるは友の友たり■冠の
ぬしにはしめて逢あふて【見せけち=た】眼中の
人のことし
影すえし浮木の亀の月の前
本庄なる祖緘禅尼の閑窓を訪ひて
かりの世も涼しき道に庵しめて
みのりを照らす窓のとほし火
野田の藤見にまかりて
今も名のふち浪すゝし宮はしら
右の外みし両都の名勝の数〳〵も
あるは斜日に追はれ又は多景に