翻刻
ときこえけれは
枝の蛙の身にあまる花と韻を継
かくて中の六日の夜船に乗りぬ
翌早天出ふね
碇まく【見せけち=て】聲きやうし【興じ】水主の者
鳴尾の沖にて
夏雲や御城も塔も余波なく
此日帆うらを打てやう〳〵翌暁
谷河へ入湊登の節のやとりを報て
見し花の枝折忘れて夏木立
一天雲なくして日和ます〳〵うらゝ
なりけれは此さとの氏神に詣て
風を祈り大悲閣に登て嵐を
ねかひ其辺り徘徊して日を暮しぬ
此夜の月もろともに船を出す帆風
すゝしくあけの日巳の刻はかりわか
郷の山の木立もみゆる計にして
俄に風あめをさそひて波高く