翻刻
吹流されて那賀郡答島に入
湊此さとに住る福田氏は近きゆ
かりなれは舎りを求むけふしの雨
風は久しふりに相見るさちを得たりと
あるしの老幼いと切にもてなし侍る
かく行さき〳〵にて厚き情の身に
あまりぬるはいかなる神の恵みにやと
そゝろに涙そ袖に落ける
真帆ならぬあらしの色やむらさきの
ゆかりの花にやとり定めて
日もまた暮るともみえねはなき
ひと〳〵の墓に詣て
したへとも其おもかけは夏草の
露けき袖にしのふむかしを
翌早天謝詞をのへていて立侍る
此日一天かき雲て晴るともなく降
ともなく雨具もいらす中田千代の