徳島県立図書館所蔵資料を翻刻

コレクション: コレクション1

花土産 - 翻刻

花土産 - ページ 9

ページ: 9

翻刻

真丸にみなとの町の建つゝきと   ありしを思ひ出て惑いよ〳〵深し   其夜舎りを求めて卧ぬ夜半より   雨しきりにして船出へくもあらす   同船せし人々は雨具等もとめて   いて立と老か身をかこちて はる雨の空をなかめてなかき日を くらし侘ぬる袖そぬれそふ   あけの日雨は晴ぬれと風あしきとて   船長にすゝめられ陸地をゆく 陽炎や笠にもしるき雨あかり   浦つたひゆく春のけしき霞こめて   眺望たとへるにものなし はる〳〵と旅の衣のそらなれて みるめ嬉しき春の海はら   佐野といふ処に鐘鋳ありとて   まふてきし遠近の人引もきらす たゝらふむ春暑けなる姿かな