翻刻
は烏丸(からすまる)なる枇杷印(びはしるし)のいたづら娘(むすめ)にうちこみて早蕨(さわらび)の手(て)をはなるゝやと詠(よみ)
かけたる指(ゆび)喰(くひ)のものがたりにみな〳〵興(けふ)に入相(いりあひ)より後夜過(ごやすぎ)までのながばなし
御(お)ひけの時(とき)申(もうし)に皆(みな)〳〵にも休息(きうそく)給はりそのまゝ閨(ねや)に入(い)り給ひしが雨(あめ)はます〳〵
降(ふり)しきりていとしめやかなる閨(ねや)に肌(はだ)さびしく宵(よひ)の程(ほど)よりの色(いろ)ばなしにて
しきりに淫心(いんしん)催(もよほ)す折(をり)しも二葉(ふたば)のまへより御(おん)つかひとして御腰元(おこしもと)の中空(なかぞら)が
まいりしをよきさいわいと引寄(ひきよせ)給ふ時(とき)藤(ふぢ)の方(かた)よりも御尋(おんたづね)に杉(すぎ)ばへの代(かはり)として氷(ひ)
室野(むろの)といふおこしもと菓子(くわし)くだものを送(おく)りけるに是(これ)もまたさいわいなりととゞ
め置(おき)まづこゝろみに此ふたりの玉門(ぎよくもん)の品定(しなさだめ)をして見(み)んと閨(ねや)の戸口(とぐち)に海老錠(ゑびぢやう)
をおろし〽かよういたせば両人(りやうにん)ともに迯(にげ)るとも道(みち)なかるべし中空(なかぞら)はうちわの事(こと)
ひむろのは藤(ふじ)の方(かた)よりの御使(おんつかひ)なればまづ此(この)かたよりもてなさん其(その)馳走(ちさう)には我(わが)
所持(しよぢ)の松茸(まつだけ)を手料理(てれうり)してふるまうべしと最前(さいぜん)よりおへきつたる陰茎(へのこ)を
いだして見(み)せければひむろのは兼(かね)てより惚(ほれ)ぬいていたれどもおよばぬ事(こと)と思(おも)