翻刻
つけぬきさしするたび開中(かいちう)の道具(たうぐ)を雁(かり)にてかき出(だ)すことくたがひの気味(きみ)よさ
こゝろよさハア〳〵ハア〳〵フウ〳〵〳〵。スウ〳〵ムウ〳〵フウ〳〵〳〵ト三人一度(さんにんいちど)に気をやりてがつかりつ
かれてホツト溜息(ためいき)藤(ふぢ)の方(かた)にも二葉(ふたば)にも使(つかひ)のかへりを待(まち)わびんトなはれかたな
き両人(りやうにん)に仕度(したく)直(なほ)させかへしやりまづ中空(なかぞら)の玉門(きよくもん)を大上々吉(たいしやう〳〵きち)と位(くらゐ)をさだめ猶(なほ)
是(これ)よりは外々(ほか〳〵)のおくの女(をんな)の玉門(ぎよくもん)を品さだめしてたのしまんト其夜(そのよ)は猶(なほ)も降(ふり)しきる
雨(あめ)の音(おと)を聞(きゝ)ねいりにさすがにくたびれまとろみ給ひぬ
空蝉(うつせみ)
うつせみの身をかへてける木(こ)のもとに涼風(すゞかぜ)かよふ夏気色(なつげしき)あつき恵(めぐみ)の代に住(すめ)ば
栄耀(ゑよう)に倦(あき)てうき旅(たひ)も浦(うら)山しさの江嶋詣(しまもうで)是(これ)もうはもり己(おの)が住家より相模(さがみ)の
方角(はうがく)へ今年(ことし)は方(はう)がわるしとて方(かた)たがへト理屈(りくつ)をつけ知音方(しれるかた)の別荘(へつそう)なる隠居(いんきよ)に
右をたのみ置(おき)きのふの夕(ゆふ)より此(この)隠居所(いんきよじよ)へとまりがけ爰(こゝ)より出立(しゆつたつ)するつもりは二三日(にさんち)
此(この)かたこの隠居(いんきよ)へ泊(とま)り居(ゐ)るおもやからの娘客(むすめきやく)是(これ)をせしめん下心にてさてこそ斯(かく)は