翻刻
まつてゐる故にやがてそろ〳〵やりかけるに又(また)雁下(かりした)が一寸五分(いつすんごぶ)ほどはいりしかば〽アレ
〽いたいか〽そんなでもないけれどなんだかいつそせつないよ〽そんならマアいゝ子(こ)だから
もうちつとがまんしな今(いま)にぢきよくしてやるからトどうやらかうやら新開(あらばち)をいた
まぬようにわりおゝせしはかの北山(きたやま)のひじりめんおこなひすませし御法(みのり)にあらで
是はふのりの徳(とく)ぞかし
末摘花(すゑつむはな)
なつかしき色(いろ)の浮世(うきよ)に老若(らうにやく)のへだてはあらじ愛着心(あいぢやくしん)角前髪(すみまへがみ)の身(み)ながらも
末摘(すゑつむ)としの中(ちう)どしまどこやら残(のこ)る花(はな)の香(か)にふと袖(そで)ふれしその日(ひ)よりたがひにし
たうあぢな縁(えん)〽ひとは浮気(うはき)で上手(じやうず)にいきな三味(さみ)せんでも弾(ひい)たり琴(こと)をよくしら
べたりする人に惚(ほれ)るがわたしは又(また)おまいのように長(なが)うたの三味せんもよくおひきだ
がそれはちやんと棚(たな)へあげて明(あけ)ても暮(くれ)ても御亭主(ごていしゆ)さんばかり大切(だいじ)にかけてあく
せくと針仕事(はりしごと)おまいのごていしゆさんはまことに仕合(しあはせ)ものだと思(おも)ふよそれにつけ