翻刻
遠山(とほやま)のたゞすまひ木(こ)だち物(もの)ふかく家(いへ)居(ゐ)まぢ
かきあたり。籬(まがき)のうちにどこまやかに心(こゝろ)をつけて
能(よく)かきたらんを。実殊(じつ)なる女(をんな)に比(ひ)しけるこそ。
実(げ)に此(この)是(みち)の分知(わけし)りなるべし。手(て)書(かく)わずも
これにおなし。爰(こゝ)かしこの点(てん)をはねちらしたる。いか
さま見事(みごと)に思(おも)はるれど。心(こゝろ)正(たゞ)しき時(とき)は筆(ふで)たゞしと。
格(かく)を乱(みだ)さず心(こゝろ)をこめしは。只(たゞ)見(み)。さまでの手迹(しゆせき)に見(み)
ねど。かの刎散(はねちら)したるに並(ならぶ)れば。見(み)るほどに見(み)ざめせず。