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なまづの力ばなし
このころ地震のうはさ遠国まできこえ信州のなまづ
御当地へ下り地震の見舞は申さねども江戸のなまづと
こんいをむすびしばらくこゝにとうりうしてありけるにあるひ
あまりとぜん【徒然】なればなまつどじ【同志 濁点の位置がズレている】ひげとひけとをむすび
あひそうはう【双方】のゑりにかけ首引(くびつぴき)をなさんとてたがひに
ちからをあらそひしが女房のあまづこれを見つけ
きもをけしてはしりより〽コレ〳〵そんなわるいことをなぜ
しなさるのじやどちらにけがゝあつてもわるいよしな
され〳〵〽とめるな〳〵〽イヤ〳〵ならぬ〽イヤサなまづの
ひげのきれるぐらゐはいといはせぬは〽そりやまた
なぜへ〽イヤサ伊賀越の平作はな〽どうしたへ
沼津(ぬまづ)ではらさへ切つたはへ
《割書:なまづの|婦夫》やきもちばなし
扨またなまづはくひッ引をしけるにいつまで
はてしなくしやうぶもつかざりしがとかく
女房は信州のなまづのひいきをするにぞ
男鯰(をなまづ)はじんすけをおこし【やきもちをやき】女にむかひいひけるは
〽コレおなまわりやァおつとのひゝきをしもせずに
あの男のかたをもち亭主(ていしゆ)をしりにひきずりあまめ
水くさいやつとはかねてしつてはゐたが大かたうぬ【相手を卑しめていう。おのれ】から
膳(ぜん)をすへたらう〽イヘ〳〵そんな〽そうではないなぜあつちへ
ついた〽ソリヤつくにはわけが〽あるならいへ〳〵〽本膳を見なせへ
向づけはなまづだはね