翻刻
繭(まゆ)は五日目より抜とるべしひゞすに能化さるは悪し種取には其々
の手入有候也抜て深き物へ入る事悪し尤沢山に重置猶わろし
指入所火気の近き所湿深き土間抔え置事甚よからす縦 雨
湿にて冷(すゝ)敷とも繭/圓坐(わらた)へ火置事不宣何程冷気大暑なる
年にても十八九日廿日にて蛾の出る様に取扱ふへし十四五日にて蛾出
るは不宣種を見れはわかるもの也繭は糸車にかけ盆の上にて撰
されは/縮(ちぢ)見/分(は)かぬもの也随分小縮形の能を撰(ゑらむ)へし又曰/蓬(よもき)を掛る
事早きは悪し蛾一ツ二ツ見ゆる時掛べし晴天大/暑(しよ)抔に風の當(あたる)
悪し繭かわき過れは羽なき蛾出るなり
十五 蛾(ひる)取/扱(あつか)ひ種取様之事
蛾は下紙に置内/湿(しつ)有る土間ぬくひ椽【縁】抔へ置へからず戸/障子(しやうじ)畳(たゝみ)の上も
直には不宣/新(あらた)なる筵(むしろ)を敷て宜し若雨湿地気抔ありて冷/気(き)な
らは暖に取扱屏風障子を隔炭火を用へし世間此事を知らぬもの有
昼前は涼しく本紙へ移して急に暖にする故種の生悪し明年の変
も有也肝要の心得也種取様は家々の風儀有予か家におゐては別に口傳
有故に爰(こゝ)に記(しる)さす陽風の取扱肝要也前に書たる通り昼夜下紙に置
内蛾の年/寄(よる)様に取扱へし□冷敷日抔は随分遅く放(はな)すへし本紙へ
移(うつ)し急に暖に取扱せわしく産る事悪し夜四ツ半九ツ時迄しと〳〵と
産(うます)様にすへし併家狭く暖気勝なる住居は無拠事なるへし随分気
を付へき事也世間の人心得違も有て蛾を早く掃捨る抔専要に心掛
る事もあり尤久敷生?はあしく産(うみ)さかりは捨かたき事也せわしく産
付夜五ツ過には蛾働(ひるはたら)かぬ故掃捨る也併自然の陽気なれは障も有間
敷事也陽気を拵早く産る事深きためし有へし又曰當時種を
障子の上に取事/時折(はやり)也高き棚抔へ指込候はゝ甚あしく有へし二階にて