翻刻
地の蚕屋二間半三間半梁の廣家扨は新宅ならは是非
を不言焼火を用るには天井板(うらいた)近く不揚長押の上引戸
を明烟籠らざる様に気付へし廣(ひろ)き蚕屋にて火に而飼ふ時
は長押より上の方よろし焼火ならは長押ゟ下にて飼ふよろし
壱間半弐間梁の蚕屋ならは縦令湿地新宅たりとも炭火
にて飼ふよろし/狭(せは)き蚕屋は蚕下能かわくもの也故に長押ゟ下にて
宜し天井板近く揚(あく)へからす火/戻(かいり)して蚕痛獅子の起に間々
よとまず見ゆるもの也縦令見へす共痛有て種に白粒出る事
此時の取あつかひに據べし長押の上引戸に気を付へし
兎角蚕下のかわくとかわかさるにて指引有へし桑の遍
見合する事第一の手段なり右焼火炭火の論は毛子獅子
二起のとりあつかひなり
廿一 飼(かい)方にて蛾損徳(ひるそんとく)有事
一或問て曰/飼(か)ひかたによりて蛾(ひる)に甲乙(こうおつ)ありと云/如何(いかん) 答(こたへて)曰尤あるべし
自家三四番/絹(きぬ)繭取蚕桑もさのみ吟味(きんみ)せすして蛾(ひる)あり山里に至
りては土用時分迄引す蚕に前後のしや別なく蛾(ひる)あり自然(しぜん)
の陽気に飼ひたる印(しるし)也/乍併(しかしなから)先き蚕に蛾(ひる)なき家は土地によ
りてなり幼少(おさな)飼(か)ひの手段にて蛾/甲乙(こうおつ)有
廿二 撫蠶(なてこ)半時桑掛ざる答
一或問て曰/撫蚕(なてこ)半時余桑掛さる事/如何(いかん)
桑付る一日/涼(すゝ)しく飼ふと同し理/考(かんかへ)べし
廿三 箙(ゑひら)扱ひの答(こたへ)
一或問て曰/箙(ゑひら)の扱ひは世間甚暖くして煙出(けむりだ)しを塞(ふさき)大/暑(しよ)にも
火を焼(やき)繭(まゆ)甚/宜(よろ)し涼しき繭/和(やわ)らか也よろしからす何の為に