東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 1

續英雄百人一首 - 翻刻

續英雄百人一首 - ページ 11

ページ: 11

翻刻

【右ページ上段】  門脇(かどわき)中納言/教盛(のりもり)は清盛(きよもり)入 道の弟(おとゝ)にて三位/通盛(みちもり)能登守(のとのかみ) 教経(のりつね)等(ら)の父なり武(ぶ)に猛(たけ)き人にて 平家の一門/都(みやこ)を落(おち)て後(のち)も備中 国/下道郡(しもみちこおり)の野(の)に五百/余騎(よき)にて備(そな) へし所四国九州の軍勢(ぐんぜい)源氏に心を 通(つう)じ二千/余騎(よき)教盛(のりもり)の備(そなへ)を取か こみて攻(せめ)けれとも事ともせず悉(こと〴〵く)おひ 拂(はら)ひ勇(ゆう)を震(ふるい)て淡路冠者(あはぢのくわんしや)掃部(かもりの) 冠者といふ二人のつはものを打取り 子息(しそく)通盛教経と一所になりて  再(ふたゝ)び主上(しゆぜう)を都(みやこ)へ還幸(くわんこう)の事を計(はか)る にその憲證(けんしやう)として正二位大納言 を送(おく)り給ひければ教盛/西海(さいかい)の波(なみ) 路(ぢ)行衛(ゆくゑ)さだめがたき夢(ゆめ)の世(よ)に此/昇(しやう) 進(しん)も又/夢(ゆめ)なりと此哥を詠(えい)じて位(ゐ) 階(かい)を御/辞退(じたい)申上て世をはかなみ 亞相(あしやう)にはなり給はず恩義(おんぎ)に一命(めい)を 捨(すて)て後(のち)の世(よ)に名(な)をのこしぬ 【右ページ下段】 平教盛(たひらののりもり) 今日(けふ)までも  あれば ある かの 世(よ)の  中に 夢(ゆめ)の うちにも ゆめを見る     かな 【左ページ上段】 新(しん)中納言/知盛(とももり)は入道/清盛(きよもり)の三 男にて一門第一の武勇(ぶゆう)の人なり元暦(げんりやく) 元年十月 屋嶋(やしま)にありて四方を 詠(なが)めしに蒼海漫々(そうかいまん〳〵)として眠(ねぶり)を おどろかし夜半(よは)の月 明々(めい〳〵)として水に うつる影(かげ)鎧(よろひ)の袖(そで)をてらし浦吹(うらふく)風(かぜ)に 磯(いそ)こす波高(なみたか)く行通(ゆきか)ふ舟(ふね)もまれ に月日 程(ほど)ふるにつけても都(みやこ)こひしくおぼ して此歌はよめり斯(かく)て屋嶋(やしま)の船軍(ふないくさ) いまだ戦(たゝかひ)なかばなるに阿波民部大(あはのみんぶのた) 輔(いふ)成良(なりよし)心 変(へん)ぜしかば味方 利運(りうん) なきをしりて人々に生害(せうがい)をすゝめ舟(ふな) 掃除(さうじ)をせさせ覚悟(かくご)の折から二位 の尼(あま)ぎみ先帝(せんてい)を抱(いだ)き奉りて入(じゆ) 水(すい)ありしかば知盛(とももり)今は心 安(やす)しとうち 笑(えみ)門脇(かどわき)教盛(のりもり)と目くばせして二 人とも鎧(よろひ)ぬぎ捨(すて)腹(はら)一文字にかき 切り海中(かいちう)へまろび入その勇名(ゆうめい)を 後(のち)の世にのこしぬ 【左ページ下段】 平知盛(たひらのとももり) 住馴(すみなれ)れし都(みやこ)の  かたは よそ なが ら 袖(そで)に 波(なみ)  こす磯(いそ)の松風(まつかぜ)