翻刻
【右丁上段】
細川高国(ほそかはたかくに)入道常桓は義晴(よしはる)将
軍の管領(くはんれい)なれど同姓(どうせい)晴元(はるもと)と戦(たゝか)
ひ軍利を失(うしな)ひ播州の浦上掃部介(うらかみかもんのすけ)
をかたらひ再(ふたゝ)び摂州に責上(せめのぼ)りけれども
味方(みかた)の赤松正則(あかまつまさのり)敵方(てきがた)へ心を通(つう)じ
うら切(きり)しければ常桓 悉(こと〴〵く)打 負(まけ)終(つひ)に
大物(だいもつ)の広徳寺(くわうとくじ)にて切腹(せつふく)す最期(さいご)
に料紙(りやうし)を乞(こ)ひ義晴(よしはる)公へ
〽この海(うみ)の波(なみ)より高(たか)きうき名(な)のみ
よゝにたえせずたちぬべきかな
伊勢(いせ)の国司(こくし)へ
〽ゑにうつす石(いし)を作(つく)りし海山(うみやま)を
のちのよまでも目かれずぞ見ん
姉のもとへ
〽世の中に迷(まよ)ふてふことなきものを
まよひといへることの葉(は)はなに
〽なしといひの哥は辞世にのこせし也
常桓(ぜうくわん)の臣嶋村 弾正貴則(だんぜうたかのり)も此時入水
して果(はて)る此霊世にいふ嶋村蟹(しまむらかに)となる
【下段】
細川入道常桓(ほそかはにうどうじやうくわん)
なしといひ
ま
た
あり
と
いふ
ことの
葉(は)や
法(のり)のまこと
の心なるらん
【左丁上段】