東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

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續英雄百人一首 - 翻刻

續英雄百人一首 - ページ 48

ページ: 48

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【右ページ本文】 織田(おた)信長公は備後守信秀(びんごのかみのぶひで)の二男 にて尾州(びしう)より出(いで)て武名(ぶめい)を諸国(しょこく)に轟(とゞろか)す 越前(ゑちぜん)より義昭(よしあき)公を迎(むか)へとり足利家再(あしかゞけさい) 興(こう)の補佐(ほさ)と号(がう)し先(まづ)佐々木承禎(さゝきじやうてい)三 好(よし)の一/類(るい)幷に伊勢(いせ)を攻(せめ)とり山門 ̄ン根(ね) 来(ごろ)の悪僧(あくそう)を討(うち)浅井朝倉(あさゐあさくら)をも平(たひ)ら げて上洛(じやうらく)し官位昇進(くわんゐしやうしん)して譜代(ふだい)被(い)【「ひ」ヵ。文字が欠けたものと思われる。右横の「平(たひ)」の「ひ」の上半分に似ている】 官(くわん)にも叙爵(じよしやく)を給ひしころ京中(きゃうちう)の 者献上物(ものけんじやうもの)ありて信長公の勝利(しやうり) を賀(が)す折(をり)から連歌師紹巴(れんがしせうは)も恐悦(きやうゑつ) に出(いで)扇子(せんす)二本/台(だい)にのせ御/前(ぜん)にさゝ げかしこまりて紹巴(しやうは) 〽にほん手に入るけふのよろこびト 申ければ信長公/喜悦(きゑつ)あり言下(ごんか)に 〽舞(まひ)あそぶ千代(ちよ)よろづ代の扇(あふぎ)にてト 附(つけ)させ給ひ紹巴(しやうは)にひきでものあまた給は りし人〳〵是をきゝ只(たゞ)荒々(あら〳〵)しく鬼(おに)の 如(ごと)き大将(たいせう)とのみ思ひしに優美(ゆうび)の事 も勝(すぐ)れ給へりと感賞(かんしやう)せしとなり 【右ページ下段】 四方(よも)の秋風(あきかぜ) はらへ 吹(ふき) すゑ 浮雲(うきくも)の 月にかゝれる さへのぼる 織田信長公(おたのぶながこう) 【左ページ本文】 松田(まつた)平介勝忠は信長(のぶなが)公の近臣(きんしん)也 天正十年五月 下旬(げじゆん)三好の残党(ざんとう)を 責(せめ)よと丹羽(には)五郎左衛門 戸田(とた)武蔵守(むさしのかみ) 坂井(さかゐ)与(よ)右衛門 等(とう)に三千 余(よ)の勢(せい)をそへ 泉州堺(せんしうさかい)より四国(しこく)に渡(わた)すべしと下(げ) 知(ぢ)せられければ一同 勢揃(せいそろ)へをなし押(おし) 出(いだ)すに信長公 急(きう)に松田平介を 使(つかひ)として堺(さかい)へ下し丹羽(にわ)等(ら)の諸将(しよせう) に告(つげ)て四国へ渡海(とかい)に及(およ)ばず其(その)勢 を以(もつ)て不意(ふい)に紀州(きしう)鷺(さぎ)の森(もり)に押(おし) よせ本願寺(ほんぐわんじ)門徒(もんと)の油断(ゆだん)せしを攻(せめ) つぶすべしと申 付(つけ)られその外(ほか)内密(ないみつ)の策(はかりごと) をさづけ紀州(きしう)へ遣(つかわ)しけるに急(いそぎ)立帰(たちかへり) 来(きた)りし所はや本能寺(ほんのうじ)にこと有(あり)て信 長公御 最期(さいご)信忠(のぶたゞ)卿も生害(せうがい) ありし 跡(あと)へ走付(はせつき)軍(いくさ)はてける故 力及(ちからおよ)ばず平介 無念(むねん)の歯(は)がみをなし妙顕寺(めうけんじ)にいたり此 哥を書(かき)のこし腹(はら)十文 字(じ)に掻切(かききつ) て義名(ぎめい)を後(のち)の世(よ)にのこしぬ 【左ページ下段】  松田平介勝忠(まつだへいすけかつただ) そのきはに消(きえ)のこる身(み)のうき雲(くも)も つゐにはおなじ道(みち)の山風(やまかぜ)