東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 1

續英雄百人一首 - 翻刻

續英雄百人一首 - ページ 56

ページ: 56

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【右上】 佐々成政(さつさなりまさ)は大/勇強(ゆうがう)の大将也/初(はじめ)北国を領(りやう) せしが天正十六年/肥後(ひご)を拝領(はいりやう)して熊本(くまもと) に移(うつり)制法(せいほう)を定(さだむ)るに隈府(くまぶ)の城主/相摸(さがみの) 守(かみ)親長(ちかなが)下知(げち)に応(おう)ぜず成政/怒(いかつ)て隈(くま) 府(ぶ)を攻(せむ)るにいまだ戦(たゝか)ひ半(なかば)に熊本に一 揆(き)起(おこり)て留守(るす)の城(しろ)を攻(せむ)るよし注進(ちうしん)ありけ れば成政(なりまさ)熊本へ引取(ひきとる)所/歒跡(てきあと)を追(おつ)て退(のき) 口(くち)難義(なんぎ)なりしが成政一世の勇(ゆう)を震(ふるつ)て引 上る此/勇戦(ゆうせん)辺土(へんど)なるゆゑ世に知(し)れざること を成政/歎(たん)ぜしといふ斯(かく)て国中/治平(ちへい)せざる は邪政(じやせい)なるゆゑと太閤(たいかふ)召(めし)給ふ成政/尼(あま)が崎(さき) 法園寺(ほうおんじ)に旅宿(りよしゆく)してありしに自害(じがい)せよと 上/使(し)の来るを成政/驚(おどろ)く気色(けしき)なく沐浴(もくよく) して撿使(けんし)に向ひ後代(こうだい)の物語(ものがたり)にせられよ と立ながら腹(はら)十文/字(じ)に切(き)り腸(はらわた)を掴(つか)み 出し天井(てんじやう)へ打付しに龍(りう)の画(ゑ)に血活(ちくわつ)のこ りて誠(まこと)の龍(りう)の蟠屈(はんくつ)する如く末代(まつだい)これを 見る者/恐怖(きやうふ)せざることなしといふ此哥は 長門(ながと)のあみだ寺(じ)にての詠(えい)なり 【右下】 名にしおふ長(なが) 門(と)の海(うみ)をきて 見れば あはれを 添(そふ)る 春(はる)の浦波(うらなみ)  佐々陸奥守成政(さつさむつのかみなりまさ) 【左上】 吉川治部少輔元長(きつかはぢぶのせうゆうもとなが)は元春(もとはる)の男に て智勇(ちゆう)の大将也/秀吉(ひでよし)と度々(どゝ)手/詰(づめ) の勝負(せうぶ)を決(けつ)せんと勇進(いさみすゝま)れし強威(がうゐ)の気(き) 質(しつ)也/父(ちゝ)元春/羽柴(はしば)の下風(かふう)に附(つか)んこと本意(ほい) なく思ひ給ひしや元長に家(いへ)を譲(ゆづ)り隠(いん) 居(きよ)し給ふ元長も一胸襟(いつきやうきん)にておはしけれど 秀吉吉川を重(おも)く用(もち)ひ給ひ九州/陣(ぢん)の 時近年/諸所(しよ〳〵)の軍物語(いくさものがたり)をもせん間(あいだ)ぜひ 出陣し給へと宣(のたま)ふに仍(よつ)て九州陣に出(しゆつ) 馬(ば)あれども俄(にはか)に病気(びやうき)脳(なやま)【悩】されければ弟(おとゝ) 蔵人経言(くらんどつねのぶ)を名代として遣(つかは)され其身 は山渓(さんけい)に入水竹の居(きよ)に心を清(すま)し隠遁(いんとん) の思ひあれば石見(いはみ)にある舎弟(しやてい)左近将監(さこんのしやうげん)【「将」のフリガナ不詳】 元氏(もとうぢ)の許(もと)へおくり給へる哥に  〽梓弓(あづさゆみ)ひかれけるぞや心にも   まかせはてなばすみぞめのそで されども桑門(さうもん)の望(のぞみ)もとけず邁(ばん) 齢(れい)四十/歳(さい)にて日向(ひうが)の国の陣中 にて病死(びやうし)したまふ 【左下】【注:歌は左から右へ読む】 まゝの  継(つぎ)はし もとの 吾身(わがみ)ぞ 中(なか)は 世(よ)の ぬる はて わたり 皆(みな)人は  吉川元長(きつかはもとなが)