東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 1

續英雄百人一首 - 翻刻

續英雄百人一首 - ページ 58

ページ: 58

翻刻

【右上】 細川幽斎卿(ほそかはゆうさいけう)は文武両道(ぶんぶりようどう)の大将にて 丹州田辺(たんしうたなべ)に在城(ざいぜう)のころ歒一万七千の 勢を以て攻囲(せめかこ)むかゝる騒(さはが)しき中にも 中院通勝(なかのいんみちかつ)卿/歌道(かどう)にて親(した)しき御中 なれば軍中に御/訪(とふら)ひのことまめやかに して幽斎卿より歌道/伝授(でんじゆ)のこと 残(のこ)りしよしにて甲冑(かつちう)の侭(まゝ)手に采配(さいはい)を 持(もち)軍の駈引(かけひき)の中にて口伝(くでん)ありし所へ 歒方より鉄炮(てつほう)しげく打両卿の中へ玉 一つ落(おち)ければ幽斎卿とりあへず  〽爰(こゝ)をさしてうつ鉄鉋【炮】の玉きはる   いのちに向(むか)ふ道(みち)は此みち かゝる場所(ばしよ)にても詠歌あることいみじく 世にきこえけり又/古今集(こきんしう)の秘訣(ひけつ)兵火の 為に失(うしなは)んことを惜(をし)み禁裡(きんり)へ奉る時の哥  〽もしほ草(ぐさ)かき集(あつ)めたるあととめて   むかしにかへせわかのうらなみ 斯(かく)て勅命(ちよくめい)ありて城の囲(かこみ)を解(とか)せ大歒を 追払(おひはら)ひ給ふ和歌の徳(とく)いと尊(とうと)むべきことなり 【右下】 いにしへも 今もかはら ぬ 世(よ)の 中(なか) に 心(こゝろ)の たねを 残(のこ)すことのは  従(じゆ)二/位(ゐ)法印幽斎(ほふいんゆうさい) 【左上】 陸奥黄門(むつのくわうもん)政宗/卿(けう)は文武(ぶんぶ)二/道(たう)に秀(ひいで) 給ふ大将にて又/能書(のうじよ)に聞(きこ)へあり敷嶋(しきしま) の道(みち)に心がけ深く世に伝(つた)へし古歌(こか)に  〽むさしのは月の入べき山もなし   草(くさ)よりいでゝ艸(くさ)にこそいれ 是にては月の出入りはるかならずと 思し此こゝろをたよりとして  〽いづるより入る山の端(は)は何国(いづく)ぞと   月にとはましむさしのゝはら かく詠(よみ)て近衛殿(このゑどの)へまゐらせしに限(かぎ)り なく御/誉(ほめ)ありて月/雪(ゆき)を事として花 のもとにすむ歌人もおもてを覆(おほ)ふよし 仰(おほせ)られける詠哥数多(よみうたあまた)の中に冨士(ふじ)を  〽いつ見てもはじめて向ふ心かな   たび〳〵かはる冨士の景色(けしき)を 此/詠(えい)たぐひなく思召と雲上(うんせう)より御 褒美(ほうび)ありし哥也又/逝去(せいきよ)の時/辞世(じせい)に  〽くもりなき浮(うき)世の月をさき立て   こゝろの闇(やみ)をてらしてぞゆく 【左下】  藤原政宗(ふぢはらのまさむね) さゝずとも誰(たれ)かは 越(こえ)んあふ 坂(さか)の 関(せき)の戸(と) うづむ 夜半(よは)の しら雪(ゆき)