翻刻
【右丁】
くはうゐんおしむへしとき人をまたさる
ことはりひまゆくこまのあしはやみ【注】つなが
ぬ月日かさなりてみこととこよのくに
におはします事きのふけふとは申
せともみちとせになるはほともなし
やをよろつの神たちこれをうれへな
げき給ひつゝとこよのくにへ御むかひを
つかはされけりすなはち御つかひはかい中
にすみ給ふあとべのいそらをつかはされ
けりいそらしんちよく【神勅=神のおつげ】をかうふりとこ
よのくにゝまいりてこのよしをかくと
申けれはみこと大きにおとろき
給ひてやかてこのいそらとともにくわん
【隙行く駒の足早み=壁の隙間に見る馬はたちまち過ぎ去ることの意から、月日の早く過ぎ去ることのたとえ】
【左丁】
ぎよ【環御】なるへきよしきこえけれはわだ
つみをはしめたてまつりもろ〳〵の
かいじんたち御なこりをおしみたて
まつる事なのめならず中にもみことの
さいあいし給ふとよたまひめはおりし
も御くはいにんのもなかなりければ
こゝにて御さんのひもをもとかせ給ひ
てたいらかならんを御らんしたゝこそと
ちゝはゝこゝろもとなくおもひ給へは
いろ〳〵にとゝめさせ給へともわかくにの
あまつ日つき【天つ日嗣=皇位】はおろそかならぬ事
なりとてかのとよたまひめをもあひ
ぐし【相具し=同行する】かへらせ給ひけりひうがのくに