翻刻
しのひてたゝとねり二人めしつきとしてやつれ
たまひて難波の辺におはしましてとひ給ふ
事は大伴の大納言の人や舟にのりてたつ
ころしてそかくひのたまとね【ママ】るとや聞ととは
するに舟人こたへていはくあやしき事かなと
わらひてさるわさする船もなしとこたふるに
をちなき事する舟人にもあるかなえしらて
かくいふとおほしてわか弓の力はたつあらはふ
といころしてくひの玉はとりてんをそくく
るやつはらをまたしとの給ひて舟に乗て海
ことにありき給ふにいと遠くてつくしの方の
海にこき出給ぬいかゝしけんはやき風吹世界
くらかりて舟をふきもてありくいつれの方共
しらす舟を海中にまかり入ぬへくふきまはし
て波は船にうちかけつゝまき入神は落かゝる様
にひらめきかゝるに大納言はまとひてまたか
かるわひしきめ見すいかならんとするそとの給
ふかち取こたへて申こゝら舟に乗て罷ありくに
またかゝるわひしきめを見すみ舟うみのそこに
いらすは神おちかゝりぬへしもしさいはひに
神のたすけあらは南海にふかれおはしぬへし
うたて有主のみもとにつかうまつりてすゝろ