翻刻
云けるかひにもあらすと見給ひけるに御心ち
もたかひてからひつのふたに入られ給ふへく
もあらす御腰はおれにけり中納言はいくいけ【*】
たるわさしてやむことを人にきかせしとし
給ひけれとそれをやまひにていとよはくなり
給ひにけりかひをえとらすなりにけるよりも
人のきゝわらはん事を日にそへておもひ給ひ
けれはたゝにやみしぬるよりも人きゝはつか
しく覚え給ふなりけりこれをかくやひめ
聞てとふらひにやる歌
年をへて波立よらぬすみの江の
まつかひなしときくはまことか
とあるをよみてきかすいとよはき心にかしら
もたけて人にかみをもたせてくるしき心ちに
からうしてかき給ふ
かひはかくありける物をわひはてゝ
しぬるいのちをすくひやはせぬ
と書はつるたえ入給ひぬ是を聞てかくやひめ
少あはれとおほしけりそれよりなん少うれし
き事をはかひありとは云ける扨かくやひめ
かたちの世に似すめてたき事をみかときこ
しめして内侍なかとみのふさこにの給うおほく
【日本古典文学大系『竹取物語』岩波書店・昭和三十二年では「わらはげ」に校訂】