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龍頭を掛んとすれども容易掛るべき体
なき故平学己が力量ニ任せ弱き事と思い
けんはからず大言を吐けれハ膽煎を初一同
腹立一応仛言すれども了簡すへき体なき故
最早此上ハ不及是非壱人力を以掛て見す
べし乍去掛損ずれバ覚悟あり見事かけ
たらんには各の命貰わんと言ければ
夫ハ無論之事無間違渡しべしと大勢同
音ニ而喚りける故覚悟を極め鐘楼へ登り
天井鑰釣等之工合を能々見計らひ伏せたる
梵鐘を何之苦労もなく傾け引冠りて
中ニ入けれハ衆人驚鎮り返つて見て居る内
静々動き出し無難ニ指上けれバ皆々恐怖
感歎之息をもせで眺め居しに龍頭掛らんと
せしを勘考之体ニて元の如くおろして良
久しく動かざりけれハ如何せしやと諸人
種々に沙汰し混雑して相待内又々再び
動き出すよと見る間に見事ニ指上龍頭を
掛るとひとしく刀を抜放し約束の如く
所望せんと大音声にて呼りけれハ不容易