デジタルアーカイブ福井の資料を翻刻

コレクション: 松平文庫

温古集 三巻 - 翻刻

温古集 三巻 - ページ 103

ページ: 103

翻刻

龍頭を掛んとすれども容易掛るべき体 なき故平学己が力量ニ任せ弱き事と思い けんはからず大言を吐けれハ膽煎を初一同 腹立一応仛言すれども了簡すへき体なき故 最早此上ハ不及是非壱人力を以掛て見す べし乍去掛損ずれバ覚悟あり見事かけ たらんには各の命貰わんと言ければ 夫ハ無論之事無間違渡しべしと大勢同 音ニ而喚りける故覚悟を極め鐘楼へ登り 天井鑰釣等之工合を能々見計らひ伏せたる 梵鐘を何之苦労もなく傾け引冠りて 中ニ入けれハ衆人驚鎮り返つて見て居る内 静々動き出し無難ニ指上けれバ皆々恐怖 感歎之息をもせで眺め居しに龍頭掛らんと せしを勘考之体ニて元の如くおろして良 久しく動かざりけれハ如何せしやと諸人 種々に沙汰し混雑して相待内又々再び 動き出すよと見る間に見事ニ指上龍頭を 掛るとひとしく刀を抜放し約束の如く 所望せんと大音声にて呼りけれハ不容易