デジタルアーカイブ福井の資料を翻刻

コレクション: 松平文庫

温古集 三巻 - 翻刻

温古集 三巻 - ページ 107

ページ: 107

翻刻

金ニ任せ家製第一之品を見せけれハ気ニ 叶ひつまミてハ喰ひ〳〵〳〵けるが素々上等 之事故金高ニも相成るニ付亭主も案事けるに 殊之外仕立方を褒め価は何程ニ相成やと問 ける故気之毒之体ニ而弐両 幾(いく)らとか相成段 答けれハ何之思案もなく払ひて出行しゆへ 不審ニ思ひ店之者追かけ為附廻しに二 條辺何とか云旅籠屋へ向ふとひとしく家内 諸共飛出奔走して座敷へ通せし故右菓子 屋の丁稚只今御入之御客ハ何国之御方ニ候哉と 問しにあの旦那ハ福井ニて名高き豪家 極印屋庄左衛門と申御方ニて度々御上京当家 御定宿之由申を聞取一さんに駆戻り主人ニ 云けれハ早々袴羽織着極製菓子箱を 携へ右旅宿へ罷越面会を乞云ふ様私店 京都上等製出之仲ヶ間ニて数年来栄候得共 未タ当旦那之如き御方御立寄之事ハ聞伝 ニも承り不申儀ニ而実ニ我家益繁盛之瑞 相と存難有存御礼ニ罷出候尚御贔屓を願 ますと深額ひて帰りしと也