← 前のページ
ページ 44 / 110
次のページ →
翻刻
勅使にて御下り之節花輪検校を召連れ
られしに信州更科姨捨山田毎の月の
名所々へ立寄玉ひて
我心なくさめかねつ更科や
おは捨山に照る月を見て と
詠したまひ検校はいかにと仰けれは取あへず
我心なくさめかねつさらしなや
おは捨山に照る月を見で と
結句のてに濁り二点をくわへ文字を不綺
見てを見でと一音の裏返して御答申せし
斯る自在なるものにて「てにをはばどども
を請る言葉を初総而仮名遣ひの文字は
篤く学ぶ事なれは古より諸名家の書を
博く見究め両京有名之大家尚所地
之先生等に便り我情の意を放れて親しく
尋ね学びたらんには実に面白き事ならん
然る処ことしより十あまり九のとせ前の頃
新たなるまつりことに改め玉ふ折からより
よろつの事々変り果ぬるありさまを
旧弊に執着するにはあらざめれどむかし