デジタルアーカイブ福井の資料を翻刻

コレクション: 松平文庫

温古集 三巻 - 翻刻

温古集 三巻 - ページ 59

ページ: 59

翻刻

【右丁】     青葉のみかすそふ山のおりさくら花はしけみのうちに                         かくれて   御詠置の和歌十五首 早春霞  きのふけふ春にしられて東路やせきの名にたつ朝霞哉 春田雨  おやまたの苗代水やますらおか心にかなふ春さめの空 山家時鳥  忍ねはわれさへきかてこゝも猶世の外ならぬ山ほとゝきす 夕納涼  松陰は秋やかよひてまたきよりゆふへの風の袖に涼しき 七夕  たなはたは年に一夜もつらからし絶せぬ中の契り思へは 山家秋夕  ゆふくれは秋をは堪ぬ山なからうき世に帰るこゝろともかな 月前草花  影やとす尾花か露を吹からに月もみたるし野への秋風 初鳫  かへる山ありとたのめて故郷やわかれ心のはつかりのこゑ 【左丁】 時雨雲  さためなき世のことわりをかみな月うらふしくれの雲やみゆ覧 枯野  秋にみし千種の花のいろ〳〵にかれ野の露におもかはりして 遠村雪  一すちの煙はかりにすむ人のありとしらるゝ雪の山もと 歳暮  出とせをあたに暮してきのふけふおしむや何の心なるらん 祈逢戀  おもふそよむかしは物をとはかりにはてぬ神さへつらからむみを 不逢戀  あふことは思ひもかけす同し世に住むかりなるなくさみもなし 寄松祝   君のみそいくとかへりの花もみん松にちとせの陰をならへて   新院御所よみをきの哥御覧あられて前の十五首とめをかせ   給ひて即御憐みの御製下し給ふ  あるはなきならひもかなしうつもれぬことのはのみそ猶のこる世に