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【右頁】
あらは小船に棹さして王子猷の跡を追ひ折から
の雪けしきを詠めはやの合点なれと舟を扱ふ
業に疎けれは危き事は聖人の誡めを守り巨燵
の櫓に陣を居へて寒気と疝気の敵を防くに
孔明か弾琴の智計も入らねは眠たき時は横になり
腹か減れは起て喰ふ寝ると喰ふとは若きより
心かけたる一芸なるをある日は宰予か浮名を取
或夜は廉頗か沙汰に預りほめる友あれはそしる
友あれともよきにつけあしきにつけ誰かは世上の
褒貶を遁れんや誉られて日を移しそし
【左頁】
られて年を越えやゝ春暖の進むにしたかひ
桃桜さく頃は老情おのつから引立てけふはさる方へ
召さるゝの明日は何某か来いと言われたの噓をつく
手に杖を携へてよろほひ出るは隠居に似気なき
笑ひくさも苦い顔して薬を飲み痛む腰を捺【擦ヵ】ら
すより家内の為にはましならんと身勝手なる了
簡も御尤との挨拶にさすか恥入る時しあれと罪
なくて配所の月を見んといひし君も窓に日黒みて
白河の関を床しめる法師もたしかに歩行好の
思はくならんと又候身勝手の了簡に是らのかた〳〵