デジタルアーカイブ福井の資料を翻刻

コレクション: 松平文庫

温古集 三巻 - 翻刻

温古集 三巻 - ページ 94

ページ: 94

翻刻

【右頁】 あらは小船に棹さして王子猷の跡を追ひ折から の雪けしきを詠めはやの合点なれと舟を扱ふ 業に疎けれは危き事は聖人の誡めを守り巨燵 の櫓に陣を居へて寒気と疝気の敵を防くに 孔明か弾琴の智計も入らねは眠たき時は横になり 腹か減れは起て喰ふ寝ると喰ふとは若きより 心かけたる一芸なるをある日は宰予か浮名を取 或夜は廉頗か沙汰に預りほめる友あれはそしる 友あれともよきにつけあしきにつけ誰かは世上の 褒貶を遁れんや誉られて日を移しそし 【左頁】 られて年を越えやゝ春暖の進むにしたかひ 桃桜さく頃は老情おのつから引立てけふはさる方へ 召さるゝの明日は何某か来いと言われたの噓をつく 手に杖を携へてよろほひ出るは隠居に似気なき 笑ひくさも苦い顔して薬を飲み痛む腰を捺【擦ヵ】ら すより家内の為にはましならんと身勝手なる了 簡も御尤との挨拶にさすか恥入る時しあれと罪 なくて配所の月を見んといひし君も窓に日黒みて 白河の関を床しめる法師もたしかに歩行好の 思はくならんと又候身勝手の了簡に是らのかた〳〵