翻刻
【右丁】
しらぬ程恥け敷は無御坐候其上百万両之価之穀物にて幾許
助けとなると思る哉惣国人数の扶助四日位の凌にて何の
用にも立さるなし其上唯今故なく百万両の穀物を買入
れる時は忽米相場六七升かた引上り六十目の時ならば六十
五六両には是然?可相成也然れは六七升かたの高き米を態々
世界中へ出来秋にて長之間為買候は大ひなる罪に而能きと
思ふ事が希て悪しき事にて不益之筋也此は此義
而已也ならす何事も此類儘ある事にて目先きの即智は
小人の活用なれば君子是を用ゆには御恩慮肝要之
儀と奉存候爰に当時は桑煙草綿紅花藍其外染草之類は
【左丁】
作して多分之得益あれは何れも皆是等之作に心を
よせて雑穀之作を減少なす也故に一体食料甚不足
にて危き限りといふべし然るに以来米価百八十目に
上れば不申付とも自然と畑を田になし或は藍綿等を
減少して米の作次第に多分と可相成儀也其は鏡にかけて
見る如く也右之通米相場莫太に上り候得は武家而已な
らす農家も大利を得事にて実に冥加怖敷次第に
可奉存候也於是貢之外反別に五升宛為冥加上納つね之儀
は百姓方より願出可申候此時常平倉を諸国に被遊御設
彼の冥加米を積置凶年之備へと被遊候得は理之当然にて