翻刻
【右頁】
障つて遂に死地に至らしむる事世に聞々多くこれ
あるなり
種痘法
種痘に六法あり
第一法は痘痂を聚め取て麝香を加へ綿に包み栓と為
し鼻孔に刺入れ置なり
此法試むるに最惡し殆と流行の痘を得る者に同し
如何となれは其鼻孔に入りたる痘毒直に脳神経に達
し又吸息に依て肺臓に入るを以て危篤の痘を發
するに至る是故に当時は此法全く廃せい但此法を
施して熱と痘と一同□□□者は悉く死す又發熱
【左頁】
の後二日を経て痘を發する者は危し又發熱の後三日
或は尚日を経て發する者は惣て安穏なり此法は非禄速弗(ヒロソプ)
託蘭洎古都(タランコト)《割書:書|名》に具載せり墨第加爾越洎意斯( メジカルセスサイス)《割書:書|名》にも
論辨せり
第二法は葉鍼を以て肉を創つけ痘痂膿汁あるものを
貼して其上に[ブラーシイ]《割書:豕羊の膀胱ナリ按に我邦にては|籜(タケノカワ)の類を代用して可ならん》を
覆ひ綿布を以て纏ひ置なり
此法疵口に毒留りて運行せさるか故に其毒増長して良
もすれは命を失ふものあり此法もし今時全く廃し
て用ゆる事なく
第三法は痘疵を取つて是を腕と脚に附着し平らかに