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血気(けつき)に任(まか)せ前後(ぜんご)の思慮(しりよ)もなく。延暦(えんりやく)十二年八月七日の未明(みめい)より三 軍(ぐん)に兵粮(ひやうらう)を
つかはせ金鼓(きんこ)を鳴(なら)し螺(ほら)を吹(ふい)て押出(おしいだ)しけり。田村丸(たむらまる)は弟麻呂(おとまろ)敵(てき)を慢(あなど)り必定(ひつでう)敗軍(はいぐん)
すべしと思ひ。もし味方(みかた)の戦(たゝか)ひ難義(なんぎ)に及(およ)ばゝ是(これ)を救(すくは)んと。一万 余騎(よき)にて後陣(ごぢん)
に備(そな)へ。合戦(かせん)のやうをぞ見物(けんぶつ)せられける。去(さる)程(ほど)に宦軍(くわんぐん)の先陣(せんぢん)百済王(くだらわう)俊哲(しゆんてつ)八千
余騎を魚鱗(ぎよりん)に隊(そなへ)貝鉦(かいがね)を鳴(なら)し喊(とき)を発(つくつ)て。賊将(ぞくせう)大熊丸(おほぐままる)が陣(ぢん)へ押寄(おそよせ)ける賊(ぞく)
方も兼(かね)て宦軍(くわんぐん)の押寄(おしよする)を知(しり)たれば。大熊丸(おほぐまゝる)五千 余騎(よき)にて押出(おしいだ)し両勢(りようぜい)暫(しばら)く矢(や)
合(あはせ)し頓(やが)て抜連(ぬきつれ)て相(あひ)がゝりに掛(かゝ)つて打 戦(たゝか)ふ。此時(このとき)宦軍(くわんぐん)の二 陣(ぢん)藤原真鷲(ふぢはらのまわし)は
八千余騎を丸隊(まるぞなへ)とし。路(みち)を横切(よこぎつ)て賊将(ぞくせう)高丸(たかまる)が七千余騎にて屯(たむろ)せし陣(ぢん)へ向(むか)ひ
ければ。高丸(たかまる)も勢(せい)を出(いだ)して迎(むか)へ戦(たゝか)ふ程(ほど)に両所(ふたところ)の敵(てき)味方(みかた)の喚(おめき)叫(さけぶ)声(こゑ)馳(はせ)ちがへる馬(ば)
啼(てい)の音(おと)四竟(しけう)に響(ひびい)て凄(すさま)じく烟塵(ゑんぢん)天(てん)を曇(くもら)しけり。然るに賊軍(ぞくぐん)は宦軍(くわんぐん)の鉾先(ほこさき)
に当(あたり)かねしか。又は思(おも)ふ旨(むね)有けるか漸々(しだい〳〵)に引退(ひきしりぞ)くにぞ。宦軍(くわんぐん)得(え)たりと勢(いきほ)ひ猛(たけ)く