Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション1

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ページ: 153

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逃(にげ)着(つき)船(ふね)にとり乗(のつ)て陸(くが)を漕(こぎ)放(はな)るゝところに。早(はや)田村丸(たむらまる)が一 軍(ぐん)かけ来(きた)り船(ふね)を臨(のぞ)んで 散々(さん〴〵)に矢(や)を射(い)かけければ賊軍(ぞくぐん)駭(おどろ)き急(きう)に東岸(ひがしのきし)へ漕(こぎ)去(さら)んとするに。彼(かの)沙門(しやもん)と宮(みや) 司(つこ)西岸(せいがん)に立(たつ)て虚空(こくう)を麾(さしまね)けば。忽(たちま)ち逆風(ぎやくふう)大いに吹起(ふきおこ)り船(ふね)を吹戻(ふきもど)し逆浪(さかなみ)を 揚(あげ)て船(ふね)を淘上(ゆりあげ)淘下(ゆりおろ)すにぞ。賊兵(ぞくへい)また大いに恐(おそ)れ騒(さは)ぎ。船子(ふなこ)們(ら)は舳艫(ともへ)にあせ つて櫓櫂(ろかい)を弄(つか)ひ船(ふね)をと東岸(とうがん)へ漕着(こぎつけ)んとす。高丸(たかまる)も駭(おどろ)きながら船櫓(ふなやぐら)に立(たつ)て船(ふな) 子(こ)に下知(げぢ)を伝(つたへ)て在(あり)けるを。田村丸(たむらまる)陸(くが)より遙(はるか)に見て五人 張(ばり)の弓(ゆみ)に矢(や)を打番(うちつがへ)。南無(なむ) 観世音菩薩(くわんぜおんぼさつ)。此(この)賊将(ぞくせう)を射(い)さしめ給へと祈念(きねん)し。ねらひを固(かた)め彎絞(ひきしぼつ)て兵(へう)ど放(はな)す に。其間(そのあはひ)百間(ひやくけん)ばかり隔(へだて)ながら。過(あやま)たず高丸(たかまる)が胸板(むないた)の正中(たゞなか)を背(せ)まで突(つ)と射通(いとふ)したり さしも兇(けうゆう)の曲者(くせもの)も。急所(きうしよ)の痛手(いたで)に堪(たまり)もあへず川中(かはなか)へ真逆(まつさかさま)に落(おち)底(そこ)の水屑(みくず)と 成(なり)にける。賊徒(ぞくと)は頼(たの)み切(きつ)たる首領(たいせう)を討(うた)れ大いに気力(きりよく)を落(おと)せし上(うへ)。逆風(ぎやくふう)逆浪(げきらう)の為(ため) に船(ふね)を浪間(なみま)に覆(くつがへ)されて溺死(できし)し。あるひは西岸(せいがん)へ吹着(ふきつけ)られて官軍(くわんぐん)に討(うた)るゝも有(あり)